「医者に金を払うよりも、みそ屋に払え」
江戸時代のことわざです。『本朝食鑑』によると「みそはわが国ではむかしから上下四民とも朝夕に用いた」もので、「1日もなくてはならないもの」であり、「大豆の甘、温は気をおだやかにし、腹中をくつろげて血を生かし、百薬の毒を消す。麹(こうじ)の甘、温は胃の中に入って、食及びとどこおりをなくし、消化をよくし閉塞を防ぐ。元気をつけて、血のめぐりをよくする」効果があるとされています。
それから数百年経った今の日本では、いわゆる「メタボ」が話題になっています。正式名メタボリックシンドロームは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態のことをいいます。メタボの状態をそのままにしておくと、動脈硬化が年相応よりも速く進行し、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気になったり、その後遺症で不自由な生活を強いられる危険性が高くなります。
そんな現代病に挑戦すべく、古来からの健康食「味噌」の良さを見直していくことで、食生活からの改善をしていきましょう。

動脈硬化とは、血管の壁が硬く変化するとともに、血管壁が厚くなり血液の流れが悪くなる病気です。動脈硬化で血流が途絶えると、そこから先へ酸素や栄養が届かず細胞が死んでしまいます。動脈硬化はメタボによって促進され、心臓でおこる心筋梗塞や脳でおこる脳梗塞、また血栓症などの原因となることが知られています。
ところが、1986年頃みその主原料である大豆のサポニンに、動脈硬化の原因でもある血清コレステロール上昇抑制効果があることが報告されました。さらに、みそ自体に関しての報告でも、1988年に日本においてラットによる実験が行われ、その作用が確認されています。
このように、みそはさまざまな角度から機能的に働いて、体内のコレステロール抑制に作用し、動脈硬化を予防する効果が期待できるのです。

塩といえば高血圧というイメージから、みそ汁は減塩運動の矢面に立たされてきました。しかし、最近の研究で、食塩の取り過ぎが高血圧をまねくかどうかは、遺伝的要素で大きく左右されることがわかっています。食塩感受性遺伝子を保有する人は日本人の2割程度に過ぎず、遺伝的素因をまったく持たない食塩制限の不要な人が半数を占めると推定されます。
また、ラットを使った実験では、みその抽出物に血圧を低下させる生理作用があることが判明しています。麹の酵素で発酵・熟成中に分解されたたんぱく質が血圧の上昇を抑える効果も期待できます。
不老長寿の汁
高血圧には、血圧を下げる栄養素を食卓に多く取り入れているかどうかにも左右されます。そこで、お勧めは野菜や海藻類を盛り沢山入れた、ミネラル、ビタミン類など豊富に取り込める不老長寿の汁とも言われる「みそ汁」です。みそ汁は日本食におけるカリウムやマグネシウムの重要な摂取源であり、その機能を無視してみそ汁を減塩運動の標的にすることは、逆にこれらの栄養素の不足にもつながりかねません。野菜、果物、イモ類などに多く含まれるカリウムは、収縮している血管を拡張させる作用があるとされているからです。
一方、海藻や納豆などの大豆製品や玄米など精製前の穀類に多く含まれるマグネシウムは、カルシウムが細胞内に流入するのを抑えます。野菜を煮ると、カリウムやマグネシウムの一部は煮汁に溶けてしまいますが、これをそっくり摂取することができるみそ汁は、日本人の食生活に欠かせないといっても過言ではないのでしょうか。

味噌に含まれている不飽和脂肪酸、イソフラボン、酵母や乳酸菌等という要素が、発ガン物質である変異原性物質を抑制する事からガン予防に効果があるとみられています。あと、細胞のガン化を招く放射性物質を除去する効果も認められています。 さらに味噌には抗腫瘍性があり、これは大豆中に含まれるトリプシンインヒビターという成分に抗腫瘍性があるからとみられています。
また、みそ汁を食べる頻度が高い人ほど胃ガンによる死亡率が低いということが以前日本ガン学会に報告され話題になりました。大豆に含まれる有効成分は、さらに肝臓ガン、乳ガン、大腸ガンなども予防する働きがあるといいます。
肺がんの原因にもなるタバコに関しても、味噌汁に含まれるビタミンB群がタバコの有害分を取り除いて、のどを守る作用もあると考えられています。 昔から「タバコ好きにはみそ汁」と言い伝えられてきました。江戸時代、ヤニでつまったキセルの掃除にみそ汁が役立ったことからこのような言い伝えができたのでしょう。ヤニでつまったキセルは、お湯や水ではきれいになりませんが煮立ったみそ汁を流し込むときれいにヤニがとれるといいます。このようにみそ汁にはタバコの害から体を守る作用があるのです。

老化の原因は幾つかありますが、おもに血管や体細胞、脳細胞に過酸化物質が増えることにより、老化が促進されます。 味噌には体内の過酸化物質を増大させにくい作用がある物質(ビタミンEやダイゼイン、サポニン、褐色色素)が含まれています。つまり味噌にはアンチエイジングにも効果が期待できます。
また、味噌に含まれるビタミンEやダイゼイン、サポニン、褐色色素などには、体内の酸化を防止する作用があります。つまり、過酸化物質をためないことが、細胞を若々しく保つための秘訣なのです。実際にラットによる実験ではサポニンや褐色色素の投与により、肝臓内の過酸化物質の増加が顕著に抑制されることも確認されています。
味噌は頭の回転をよくするにも非常に優れた食品といえます。脳の新陳代謝に欠かせないたんぱく質とビタミンB群を多く含んでいるからです。また、味噌に含まれるたんぱく質は植物性たんぱく質の中でもアミノ酸組成が優れていることが知られています。さらに脳内での神経伝達の促進には、コリンとアセチルコリンが不可欠であり、コリンは味噌に沢山含まれるレシチンに含まれています。
食からのアプローチとして、脳の活性化や老化防止に役立つ味噌をもう一度見直してもいいかもしれませんね。
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